今日は前回の在宅就労支援から派生したリモートワークのお話です。
新型コロナウィルス感染症の影響で緊急事態宣言が出されて以降、福祉業界でもリモート環境の整備という話を聞くようになりました。実際、僕の住む地域では行政からリモート環境整備のための補助もでるようになりました。
そのような現状を踏まえた記事を書いていきたいと思います。
今回の記事の対象は…
- 在宅就労支援でのリモート環境の活かし方を知りたい。
- 実際に何をすればいいの?
- リモート支援に関する記事があれば参考にしたい。
このような人は参考にして下さい。
ちなみに、今回の例はあくまでも僕たちの地域での話なので地域によっては多少違うこともあるでしょう。なのであくまでも参考までに。
リモート在宅就労支援は◎
これから色々と書いてはいきますが最初のうちにやってみてわかったことを1つ。
実際に在宅就労支援をリモートと非リモートで行うこととなり(別にはかったわけではありませんが…)、あとになって比較してみるとリモートの方がとても恵まれていたなと感じます。
リモート在宅就労支援とはいえ基本通常どおり
そんなリモートでの在宅就労支援はどうやって行えばいいのか。実際に他の事業所からも聞かれることがあったので、それについて書いておきたいと思います。
とはいえ、前回の記事でも書いたように普段の事業所での支援と変わらないように支援を行うことが必要になります。
なので、
- 利用者の健康状態など状況確認
- 作業や就労訓練の実施
- 利用者への支援実施を証明するための記録作成
これらが必要なのは同じです。
リモート環境でも変わらないのでコレをベースにどのように支援するかを考えました。
リモート在宅就労支援の流れと準備
上で書いたようなポイントを実際に行うために、僕たちの事業所では以下のような流れて行うこととしました。
- 朝のミーティング
- 作業打ち合わせ
- 各々で作業実施
- 終了のミーティング
このように工程を組み実施しました。
その他の詳細は以下のとおりですので、簡単に確認して下さいね。
対象者は8名
リモート在宅就労支援の対象者は8名でした。登録者数は21名。そのうち数名は入院者や入居施設が閉鎖処置をとっている人などを抜いて18名。そのうちの8名実施。本当であれば全員行いたいところでしたが、PCを使えない人やWi-Fi環境がない人もいたため8名が当時は限界でしたね。
PCやタブレットは貸し出し
リモート在宅就労支援にあたりリモート環境は必要ですね。ただ、スマホはあれどもPCやタブレットは持っていない人がほとんど。ということで、事業所のデバイスを貸し出し対処することとしました。利用者2名は普段からPCの作業を行っているためそのまま貸し出し、1名は今後作業へ参加予定であったため予定していたPCを貸し出しました。それ以外の5名は同じ有料老人ホームに入居していたためタブレット1台を貸し出し、共同で使ってもらうこととしました。
使ったのはハングアウト
リモート在宅就労支援のためにはつながることが必要。サービスはどんなものにするかは悩みましたね。当時はZOOMが流行りはじめていましたからね。ただ、普段からPC作業の半ではGoogleアカウントは準備していたこと、比較的ハングアウトの方が導入までハードルが低くてすむことを考慮してサービスを選択。
Wi-Fiは自前で対応をお願い
PCやタブレットともにリモートに必要なのはWi-Fi環境。ここが一番かもしれませんが、確保が難しいんですね。当時は準備ができなかったので、リモート参加する人たちのWi-Fi環境で対応してもらいました。何らかの施設に入居している人たちの場合は、施設のWi-Fiを使わせてもらいました。
その他
デバイスのセットアップは僕たち事業所側で行い配布しました。また、有料老人ホーム入居の5名は自分たちで操作することは難しかったので入居先スタッフからの協力を取り付けました。日頃からの関係って本当に大切だなと。
事業所での1日と同じように支援を実施
さて、こんな形で準備して行ったリモート在宅就労支援。
どのようにやったかも書いておきますね。
朝のミーティング
事業所での朝と同じ様にミーティングを開きました。時間とともにハングアウトでリモートミーティング。僕もいれて4名でミーティングを実施して体調の確認を行いました。ついでに施設内の他の人達の健康状況なども確認しました。
作業打ち合わせ
こちらで準備した作業や訓練のうち、その日に何を行うかを相談して決めました。PC作業を普段している人たちはProgateでの学習やクラウドワーク、画像加工等の作業。有料老人ホームの人たちは事前に届けておいた内職作業等。通院等の予定などを加味しながら決めていきました。
各々で作業や訓練実施
ここからは一度リモート解除。各々の部屋で自分たちの作業や訓練を行ってもらいました。この間、通院する人たちは通院してきたり、返ってきてから作業に復帰したりなど自分たちの生活ペースに合わせて作業を実施してもらいました。
終了のミーティング
普段事業所の作業が終わる時間帯に再度リモートミーティングを実施。その日に行った作業の進捗状況の確認や体調の変化、明日の作業の確認などを行いました。ミーティング中に作業でわからなかったところは画面共有して確認したり、事業所側からの必要なお知らせなども画面共有で行いました。
スタッフはその日の記録を作成
ここまでで一日の支援は終了。その記録を僕たちスタッフは「事業所閉鎖中における支援の記録」として作成しました。普段の記録とは別に管理し、記録は全てクラウド共有をしました。ちなみにこの時に使用したのはサイボウズの提供する「kintone」を利用しました。
やってみての感想:良かったこと・良くなかったこと
この様に実施したリモート在宅就労支援。やっぱりやってみないとわからないことは色々あるなと感じました。
良かったこと3つ
実際にやってみてよかったのは以下の3つ。
- 実際に表情や様子が見えるので状況把握には良い
- 画面共有で離れていても理解してもらいやすい
- 生活にメリハリが付きやすい
色々と良かったことはありますが代表的な良いところ3つです。
実際に表情や様子が見えるので状況把握には良い
電話で状況確認を行う利用者もいましたのでそのケースとの比較。やはり表情や様子が見えるのは大事で、健康状態は見た目にも現れるため把握はしやすくなりました。健康状態の把握は一番大事ですからね。また、電話での対応だと1対1のやり取りになりますが、リモート環境だと複数名で会話もできますね。自宅にこもる生活の中では他者との関わりはどうしても減るため、そんな時に複数で話すことができる環境を準備できるのはリモートならではの良さでした。
画面共有で離れていても理解してもらいやすい
画面共有の機能が使えたのもリモートならではの良さでした。電話だと伝えても理解しにくいものもありました。特に作業指示などは細かい内容もあるので口で説明してもわからないことってありますしね。それに比べて実際に見て確認できるのは本当に便利。画像共有ではコチラのPCの画面を共有できるため、説明の理解度は大幅に向上しました。
生活にメリハリが付きやすい
これは、実際に利用者1名からあった良かった点です。自宅内での生活はどうしてもメリハリに欠けますよね。電話ならそのままですよね。ただ、実際に顔を見せて話すリモートだと嫌でもメリハリを付ける必要がでてきます。少なくとも服装を整えたりはしようとする気にはなったとのこと。
上であげた以外にも良かったことはあります。特に画像加工の研修を実施できたのは大きかったと思っています。普段うちの事業所ではプロのカメラマンさんに写真など画像を加工するための技術を身につけるための研修を2週に1度実施してもらっています。それをリモート環境でも試しに実施。講師もリモートでつなげて研修開催。やはり事業所で行うときとは違って不便なところもありましたが、画面共有をしながら作業をやってみせたり、実際に利用者が加工した画像を確認したりしながら研修を開けたのはリモート環境だからこそ行えたものです。
良くなかったこと
実際にやってみて良くなかったのは、実際の通所生活にはかなわないということです。
どんなに画面共有しても伝わりにくいことはありますし、目で見ただけではわからない変化というものはありますしね。
閉鎖解除までには分散通所なども実施してみましたが、健康状態の維持には通所が必要な人が多かったことも事実。あくまでも、閉鎖環境ではリモート在宅就労支援は有効であるというのは言えますが、通常に勝るものは無いですね。
あくまでも事業所閉鎖では有効であった
ということで、長くなってきたので今回はここまで。
先に書いたように、在宅就労支援を行う際にはリモートワークの体制はとても有効であるなと感じます。
実際に電話で支援を行うよりはリモートの方がやれることは広がりましたし、現実世界では難しい集団での関わりもリモートでは不十分ではありつつも機会を持つことができます。
当然通所して支援を受けるのに勝るものは無いでしょうが、もし事業所閉鎖の状況下になった場合には利用者によりよい支援を届けることができると考えています。
僕の地域の事業所ではまだまだリモート環境を整えるような動きは見られません。が、利用者のことを考えるのであればできる限りの環境を提供するべきだと考えます。
この記事がその後押しに少しでもなればと思っています。それでは、また。